
観葉植物の水耕栽培で夏に気をつけるポイント|根腐れ防止対策と初心者向け夏の管理方法
【執筆者】中島大輔(WOOTANG代表)【最終更新日】2025年8月13日
夏の観葉植物の水耕栽培で最も注意すべきは「根腐れ」です。室温33℃を超えると水温上昇により酸素不足や病原菌の増殖が起こり、大切な植物が枯れてしまうリスクが高まります。しかし、正しい環境管理と水の管理方法を知っていれば、初心者でも夏の水耕栽培を成功させることができます。
直射日光を避けた置き場所の選び方から、効果的な水替え頻度、サーキュレーターを使った空気循環のコツまで、根腐れ防止の具体的な対策をわかりやすく解説します。暑い夏でも元気に育つおすすめの観葉植物5選もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1、なぜ夏に根腐れが起こりやすいのか?
夏の時期の観葉植物の水耕栽培でよくあるトラブルが「根腐れ」で枯れてしまうことです。この根腐れの原因は、気温が高くなることにより、水温が上昇してしまうことが原因です。
水温上昇で起きる3つの問題(根腐れを引き起こす直接的な要因)
①水中の酸素濃度の低下
水温が上がると水に溶け込む酸素量が減少します。植物の根は呼吸をしているため、酸素不足により根の機能が著しく低下し、最終的に窒息状態になってしまいます。
②病原菌の増殖
水温が上昇することで、根腐れを引き起こす病原菌(嫌気性微生物)が活発に繁殖します。これらの菌が根を攻撃し、腐敗を進行させます。
③根の機能低下
高温により根の新陳代謝が乱れることにより、栄養や水分の吸収能力が大幅に低下します。
根腐れを起こしやすい温度の目安
私の経験上では、室内の温度が33℃を超えると根腐れが起こりやすくなる傾向があるので、注意が必要です。一般的に、水温が30℃を超えると根の活動が著しく低下し、35℃を超えると根が損傷を受けて根腐れしてしまう危険性が高まります。
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【参考記事】
水耕栽培でも根腐れする?その原因と対処法(BOTANICA)
根腐れはなぜ起こる?~根腐れの仕組みと原因、症状と見分け方(GarDeco Japan)
2、根腐れの見分け方
根腐れしているかどうかは、以下の方法で確認できます。
臭いでチェックする
器の上から鼻を近づけて、水を嗅いだ時、もし「腐敗臭(酸っぱいような腐った臭い)」がした場合、根腐れしている可能性があります。
根の状態をチェックする
根元の先端を指で摘んだ時、柔らかくなっていて、グチュグチュに溶けるような状態であった場合、根腐れしています。
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参照:水耕栽培で根が茶色い!それ、根腐れ?見分け方と復活・予防策(PlantFactory Boost)
3、夏の根腐れ防止対策【環境編】
植物を置く場所と周辺環境を整えることで、根腐れの最大の原因である水温上昇を効果的に防ぐことができます。以下の3つのポイントを押さえて、植物にとって快適な環境を作りましょう。
①直射日光を避ける
直射日光が当たると、夏などは水温が急上昇して、根腐れする可能性高まります。また光の反射による収れん火災の可能性もありますので、直射日光が長時間当たる場所には置かないでください。
- 窓から少し離れた明るい場所
- 間接光が差し込む場所
- レースカーテン越しの光が当たる場所
②エアコンで室温を管理する
室内の気温が33度を超える場合は、エアコンなどで温度調整して、室内の温度を30度以下に下げることが重要です。夏の時期の観葉植物にとっては25℃〜29℃が理想です。
③サーキュレーターで空気循環を良くする
エアコンを使用しない場合、サーキュレーター(扇風機)で部屋の空気を循環させましょう。エアコンをつけっぱなしだと電気代が気になる方はサーキュレーター(扇風機)の風を植物に当てるだけでも、植物の周りの温度を下げる効果があります。
- 首振りのサーキュレーターで部屋全体の空気を循環させる
- 植物にも風が当たるように調整する(当たりぱなしにせず、首振りで定期的に当たる程度)
- 窓を開けてこまめに換気する
【参照記事】
観葉植物の温度|適温や調節方法について(AND PLANTS)
観葉植物とサーキュレーター|必要性や使い方について(AND PLANTS)
4、夏の根腐れ防止対策【管理編】
環境を整えたら、次は日々の管理方法を見直しましょう。水の管理、肥料の与え方、葉水の活用など、ちょっとした工夫で根腐れのリスクを大幅に減らすことができます。夏の間は特に注意深く観察し、植物の状態に合わせたケアを心がけましょう。
①こまめな水替え
こまめな水替えをしてあげることで、水中の病原菌などの繁殖を防ぐことができます。
- 夏は、1週間に1度
- 秋・冬・春は、2〜3週間に1度
水量の調整
夏の間は、水の量を少なめにしてあげる(根の一部が空中に出ている状態にする)と、根腐れしずらくなります。根の一部が常に空気に触れて酸素を取り込むことができます。
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③効果的な葉水の活用
朝と晩に葉水を上げることで植物自体の温度を下げる効果があります。
- 朝晩の気温が低い時が最も有効
- 夏の時期は涼しい時間帯(午前中、夕方)にあげましょう。気温が高い日中に葉水をすると、葉に付いた水の温度も急上昇して、葉が痛んでしまうことがあります。
- 気温が高い日にあげると蒸れてしまうことがあるので、サーキュレーターなどで風を当ててあげることが有効
夏の肥料の正しい与え方
観葉植物の水耕栽培では肥料は水の中に入れず、葉面散布してください。特に気温の高い時期に、肥料を水に入れてしまうと病原菌が発生しやすくなり、根腐れしやすくなってしまいます。
- 肥料をあげる時は、葉に直接吹きかけるタイプの肥料や活力剤を使用してください。
- ハイポネックス「速効スプレー液」などのスプレー式栄養剤がおすすめ
【参照記事】水耕栽培でもう根腐れしない!酸素不足にさせない!予防と対処はこれで大丈夫
5、初心者におすすめ!夏に枯れにくい水耕栽培の観葉植物5選
夏に水耕栽培を始める場合、暑さに比較的強い植物を選ぶことも重要です。
サンスベリア ローレンチー(虎の尾)
緑と黄緑のストライプ模様が美しく、「虎の尾(トラノオ)」という和名で親しまれています。肉厚な葉には水分を蓄える能力があり、極めて乾燥に強い植物です。アフリカ原産で高温に慣れているため、夏場の水温上昇にも対応できます。また、耐陰性抜群で日照不足に強く、室内照明だけでも十分育つため、夏の強い日差しを避けた場所でも元気に成長します。
ミリオンバンブー
竹のような見た目が特徴的で、実際には竹ではなくドラセナの仲間です。縁起が良い植物として人気があり、水耕栽培では特に育てやすい品種です。熱帯アジア原産のため高温多湿な環境に適応しており、夏の暑さにも強い耐性を持ちます。水中でも根がしっかりと成長し、水温の変化にも比較的対応できるため、夏の水耕栽培に最適です。
アグラオネマ マリア
美しい斑入りの葉が印象的で、インテリアプランツとして非常に人気の高い品種です。東南アジアの熱帯雨林原産で、もともと高温多湿な環境で自生しているため、夏の暑さには非常に強い特性があります。耐陰性に優れ、室内の明るい場所であれば直射日光がなくても健全に育ちます。また、水耕栽培での根の適応力が高く、水温の上昇にも比較的耐えられます。
ドラセナ サンデリアーナ
細長い葉が上向きに伸びる美しいフォルムが特徴で、「幸福の木」とも呼ばれる縁起の良い植物です。アフリカ原産で乾燥地帯の厳しい環境に適応してきたため、高温に対する耐性が非常に高く、夏の水温上昇にも問題なく対応できます。水耕栽培では根腐れしにくく、丈夫で育てやすいのが特徴です。また、少ない光でも育つため、夏の直射日光を避けた室内でも元気に成長します。
ガジュマル
沖縄などの亜熱帯地域が原産で、「精霊が宿る木」として親しまれている縁起の良い植物です。もともと高温多湿な気候で自生しているため、夏の暑さには抜群の耐性を持ちます。太い幹と丸い葉が特徴的で、水耕栽培でも安定して育ちます。根の生命力が非常に強く、多少の水温上昇や環境変化にも対応できるため、夏の水耕栽培初心者にもおすすめです。光合成能力も高く、室内の明るい場所で健全に成長します。
6、夏の水耕栽培成功の4つのポイント
水耕栽培の観葉植物を根腐れから守るポイントは、意外とシンプルです。まず、直射日光を避けて窓からやや離れた明るい場所に置き、水温の急上昇を防ぎましょう。次に、こまめな換気で風通しを良くし、植物と水に新鮮な空気を届けます。水替えも重要で、春夏は週に1度、秋冬は2〜3週間に1度の頻度で行うことで、根から出る老廃物による水質悪化を防げます。そして肥料は水に直接入れず、葉面散布タイプを使用するのがベスト。
- 環境管理:直射日光を避け、33度以下の室温を保つ
- 水の管理:週1回の水替えと適切な水量調整
- 空気循環:サーキュレーターで風通しを良くする
- 正しい肥料管理:葉面散布で栄養補給
これらの対策を実践することで、夏の厳しい環境でも観葉植物の水耕栽培を成功させることができます。症状が出たら早めに対処し、予防を心がければ、水耕栽培の観葉植物はより長く美しく育ちます。
【この記事を執筆した人】WOOTANG代表/植物アーティスト。植物をもっと身近に気軽に育てて欲しいという想いから2020年に水だけ育てる観葉植物ブランド「 WOOTANG(ウータン)」を立ち上げる。その他「植物×アート」制作を行い、インテリア、空間デザイン、メディアなどを通して提案している。<プロフィールページを見る>