
フィロデンドロンの水耕栽培|初心者でも失敗しない育て方とおすすめ品種(バーキン・レモンライム)
【執筆者】中島大輔(WOOTANG代表)【最終更新日】2025年8月25日
観葉植物の中でも美しい葉模様で人気のフィロデンドロン。実は土を使わない水耕栽培で簡単に育てることができることをご存知ですか?水だけで育つフィロデンドロンは、根腐れの心配が少なく、初心者でも失敗しにくい栽培方法です。特に人気のバーキンやレモンライムなどの品種は、水耕栽培でも美しい斑入りを維持でき、インテリアグリーンとしても最適。
この記事では、フィロデンドロンの水耕栽培の始め方から日々の管理方法、よくあるトラブルの対処法まで、植物初心者でもわかりやすく解説します。
1、フィロデンドロンの特徴
水耕栽培への適応性
フィロデンドロンは水耕栽培に非常に適した植物です。根が水環境に適応しやすく、水挿しでの発根も比較的容易に行えます。土栽培から水耕栽培への移行も成功率が高く、適切な管理を行えば土栽培と同等以上の美しい株に成長させることができます。
水栽培やハイドロカルチャーでの栽培において、フィロデンドロンは根の成長が早く、美しい根を観察できるのも魅力の一つです。また、剪定によってどこを切るかを適切に判断することで、水挿しから新しい株を増やすことも可能で、長期間にわたって楽しめる植物です。特にバーキンやフロリダなどの人気品種は水耕栽培でも美しい斑を維持でき、室内のインテリアグリーンとしても高い装飾効果を発揮します。
生育環境
フィロデンドロンは熱帯雨林の環境を好み、高温多湿と明るい間接光を必要とします。生育適温は20〜28℃で、15℃を下回ると成長が停滞し、10℃以下では枯死の危険性があります。原産地では森林の中層から下層で生育しているため、直射日光は苦手で、強すぎる光は葉焼けの原因となります。
耐寒性は弱く、日本では基本的に室内での栽培が適しています。一方で耐暑性は比較的強く、適切な湿度が保たれていれば35℃程度までの高温にも耐えることができます。空気中の湿度を好むため、乾燥する環境では葉先が枯れやすくなる特徴があります。
花言葉と風水
フィロデンドロンの花言葉は「華やかな明るさ」「壮大な美」です。その美しい葉形と生命力の強さから、明るい未来と豊かさの象徴として親しまれています。
風水の観点では、「愛情運」と「人間関係」の向上効果があるとされ、リビングや寝室に置くと家庭の和を保ち、「恋愛運」アップにも効果があるとされています。バーキンのような美しい斑入り品種は「金運」の向上効果があるとされ、仕事部屋や書斎に置くことで仕事運の向上が期待できます。また、フィロデンドロンの多くの品種が持つ大きな葉は「負の気を浄化する」作用があるとされており、ストレスの軽減や心の安定に効果があるといわれています。
2、フィロデンドロンの水耕栽培の始め方
フィロデンドロンの水耕栽培を始める際は、まず水に適応した株を用意することが大切です。水だけで育てる観葉植物ブランド「WOOTANG(ウータン)」では、さまざまな種類の水耕栽培用のフィロデンドロンをオンラインで販売しているので、購入すればすぐに栽培を開始できます。
①植物を器にセットする
水耕栽培に使用する容器は、ガラスやプラスチック製の透明なものがおすすめです。透明な容器なら根の状態や水位が一目で確認でき、管理が容易になります。また、容器はフィロデンドロンの茎がぐらつかないよう、しっかりと固定できることが重要です。WOOTANGの水耕栽培専用の容器なら器(ガラス製)とふた(木製)がセットになっていて、植物の大きさによって器のサイズ(S~L)を選ぶことができます。
②水を入れる
容器に水を入れる際は、必ず水道水を使用してください。浄水器を通した水や蒸留水は塩素が除去されているため、雑菌が繁殖しやすくなる危険があります。水道水に含まれる微量の塩素は、水の腐敗を防ぐ自然の防腐剤として機能するため、水耕栽培には最適です。
水を入れる前に、容器が清潔であることを確認し、汚れや油分が付着していないかチェックすることも重要です。フィロデンドロンは水温の急激な変化に敏感なため、季節の変わり目や冬場は特に注意が必要です。室温に近い温度の水を使用し、温度差を最小限に抑えることで、根へのストレスを軽減できます。
③理想的な水の量
フィロデンドロンは比較的、水をよく吸収する植物なので、特に夏場は水切れに注意が必要です。そのため高温期は根から幹の一部が水に浸かる程度(水の高さ3〜4cm程度)まで水位を上げても問題ありません。冬などの低温期は、水を吸収しなくなるので少なめ(1〜2cm程度)で問題ありません。植物の成長に応じて根の長さも変化するため、定期的に水位を調整し、常に適切なバランスを保つことが成功の鍵となります。
フィロデンドロンの水耕栽培では、根の一部を空気中に露出している状態の方が良い種類があります。バーキンやインペリアグリーンのような大型品種では、成長すると気根(幹から出てくる太い根)が生えてくるので、その気根は全部水に浸けずに、空気中に出しておいた方が元気に育ちます
3、日々のケアと管理方法
水耕栽培でフィロデンドロンを健康に育てるためには、土栽培とは異なる管理ポイントを理解することが重要です。特にフィロデンドロンは明るい環境と高い湿度を好む性質があるため、光の管理と水質の維持、湿度管理が成功の鍵となります。
①置き場所
フィロデンドロンは明るい間接光を好む植物で、レースカーテン越しの窓辺や窓から少し離れた明るい室内が最適な置き場所となります。直射日光は葉焼けの原因となるため避ける必要がありますが、あまりに暗い場所では茎が徒長したり葉の色が薄くなったりする可能性があります。フィロデンドロン特有の美しい斑入りを維持するためには、十分な明るさが必要です。
冬場の管理には特別な注意が必要です。窓際は夜間に急激に温度が下がるため、夕方以降は部屋の中央に移動させることをおすすめします。フィロデンドロンの生育適温は20から28℃前後で、15℃を下回ると生育が停滞し、10℃以下では枯死の危険性があります。エアコンやヒーターの風が直接当たる場所も乾燥と温度変化の原因となるため避けてください。
フィロデンドロンは品種によって光の必要量が異なります。バーキンやフロリダなどの斑入り品種は十分な光量がないと斑が消失する可能性があるため、より明るい場所での管理が必要です。一方、レモンライム、インペリアルグリーン、セロームのような黄・緑葉品種は比較的低光量でも育ちますが、健康的な成長のためには明るい環境が望ましいです。
【参考記事】豊かなくらしに寄与する光/光と植物-植物工場(文部科学省)
②水の交換頻度と水質管理のコツ
基本的に週1回は減った分の水を補充し、水位を一定に保つことが重要です。また、2〜3週間に1度は容器内の水を完全に交換し、新鮮な水と入れ替えます。この際、容器の内側にぬめりや藻が発生している場合は、スポンジなどで丁寧に洗浄し、清潔な状態を保ちましょう。
水替えの際には根を優しく水で洗い流すことで、根に付着した老廃物を除去できます。特にフィロデンドロンは他の観葉植物と比較して根からの分泌物が多い傾向があるため、定期的な根の洗浄は健康維持に効果的です。夏場は水温が上昇すると水中の溶存酸素量が減少し、根が酸素不足になりやすくなるため、こまめな水交換がより重要になります。
フィロデンドロンの水耕栽培では、水質の変化に対する反応が早いため、異変を見つけやすいという利点があります。水が濁ったり異臭がする場合は、すぐに新鮮な水に交換し、根の状態を確認してください。また、葉の色つやや新芽の出方も水質の良し悪しを判断する指標となります。
③適切な肥料の選び方と与え方
水耕栽培でフィロデンドロンを現状のサイズで維持する場合、基本的に肥料は必要ありません。しかし、より大きく成長させたい場合や茎を太くしたい場合、葉の色つやを良くしたい場合は、適切な施肥が効果的です。水耕栽培では液体肥料を使用し、春から秋の生育期に月1回程度の頻度で与えます。
肥料を与える際の重要なポイントは、水に直接、肥料を入れないことです。肥料は根を傷め、根腐れの原因となります。水耕栽培でおすすめの方法は、液体肥料を葉面散布することです。霧吹きに薄めた液体肥料を入れて葉の表裏にまんべんなく散布すれば、葉から直接栄養を吸収でき、根への負担を最小限に抑えられます。
水耕栽培に適した肥料としては、ハイポネックス原液やハイポニカ液体肥料などがあり、これらは水耕栽培専用に配合されているため安心して使用できます。フィロデンドロンの美しい斑入りを維持するためには、チッソ分がやや多めの肥料を選ぶと効果的です。特にバーキンのような白斑品種では、適切な施肥により斑の美しさを長期間維持できます。
【参考】ハイポネックス原液のご紹介(株式会社ハイポネックスジャパン)
④季節ごとの管理ポイント
春(3月から5月)は新芽が動き始める重要な時期です。明るい日陰で管理し、月1回程度の施肥を開始します。葉水を1日1〜2回与えて湿度を保ち、新芽の成長を促進させましょう。この時期はフィロデンドロンの株分けにも適しており、剪定でどこを切るかを適切に判断して水挿しでの増殖も成功しやすい季節です。特に春は新しい品種への挑戦にも最適で、フロリダなどの繊細な品種も比較的育てやすくなります。
夏(6月から8月)は生育が最も活発な時期ですが、高温による水質悪化に注意が必要です。水温が30℃を超えないよう、直射日光を避けて風通しの良い場所で管理します。水の交換頻度を増やし、1〜2週間に1度は完全に交換しましょう。冷房による乾燥対策として、葉水の回数を増やすことも大切です。フィロデンドロンは暑さに強い植物ですが、水耕栽培では水温管理がより重要になります。
秋(9月から11月)は成長が緩やかになる時期です。肥料の頻度を徐々に減らし、10月以降は施肥を控えめにします。気温の低下に合わせて室内の暖かい場所に移動させ、急激な温度変化を避けるよう配慮します。セロームのような大型品種では、この時期に形を整える剪定を行うのも良いでしょう。
冬(12月から2月)は休眠期に入るため、15℃以上の場所で管理することが最重要です。肥料の葉面散布は完全に止めます。ただし、暖房による乾燥には特に注意が必要で、フィロデンドロンは湿度を好むため、葉水は継続して与えます。フィロデンドロンは多くの熱帯植物の中でも特に寒さに弱いため、この時期の管理が翌年の生育を左右します。
4、よくある問題と対処法
Q、フィロデンドロンの葉が黄色くなってきました。何が原因でしょうか?
A:葉が黄色くなる原因はいくつか考えられます。まず、一番下の古い葉が1〜2枚黄色くなる場合は、新陳代謝による自然な老化現象なので心配ありません。植物は古い葉に老廃物を溜めて落とし、新しい葉の成長にエネルギーを集中させる性質があります。この場合は黄色くなった葉を根元からハサミで切り取ってください。
一方、複数の葉が同時に黄色くなったり、新しい葉まで変色する場合は、水質の悪化や根腐れの可能性があります。特にフィロデンドロンは水の汚れに敏感な傾向があるため、水が濁っていないか、異臭がしないか確認し、すぐに新鮮な水と交換しましょう。また、根が茶色く変色していたり、ぬめりがある場合は、傷んだ部分を清潔なハサミで切り除き、容器を洗浄してから新しい水で管理を再開してください。
Q、フィロデンドロンがぐったりして元気がありません。原因と対処法を教えてください。
A:フィロデンドロンがぐったりする原因として最も多いのは、温度不足と光量不足です。フィロデンドロンは熱帯植物のため15℃以下の環境では活力が低下し、ぐったりとした状態になります。まず置き場所の温度を確認し、20℃以上の暖かい場所に移動させてください。
次に光量を確認しましょう。フィロデンドロンは明るい環境を好むため、暗すぎる場所では株が弱ってしまいます。特にバーキンやフロリダなどの斑入り品種は光量不足で斑が薄くなり、全体的に元気がなくなることがあります。レースカーテン越しの明るい窓辺に移動させ、1日数時間は十分な明るさを確保してください。
また、根腐れの可能性も考えられます。特に高温期は水温が上昇すると根腐れの可能性が高まります。根を確認して、柔らかくなっていたり、異臭がする場合は、傷んだ根を切り除き、新鮮な水で管理を再開してください。水位も重要で、根の一部が必ず空気に触れている状態を保ちましょう。
Q、フィロデンドロンの剪定でどこを切るのが適切ですか?
A:フィロデンドロンの剪定は成長期である春から秋に行うのが最適です。剪定でどこを切るかは目的によって異なりますが、基本的には節(葉の付け根)の上約1cm程度の位置で斜めにカットします。この部分には新芽を出すための成長点があるため、適切な位置での剪定により新しい枝が出やすくなります。
形を整える場合は、伸びすぎた枝や込み合った部分を中心に剪定します。特にセロームのような大型品種では、古い下葉を取り除き、上部の枝を適度に剪定することで、バランスの良い樹形を維持できます。剪定した枝は水挿しで増殖できるため、捨てずに新しい株作りに活用しましょう。
Q、フィロデンドロンの水挿しの増やし方とコツを教えてください。
A:フィロデンドロンの水挿しは比較的成功しやすく、4月から6月頃が最適な時期です。健康な枝を10〜15cm程度にカットし、下部の葉を取り除きます。切り口は斜めにカットして水を吸い上げやすくし、メネデールなどの発根促進剤を使用するとより確実です。
透明な容器に水道水を入れ、切り口が2~3cm水に浸かるようにセットします。2〜3日に1回水を交換し、常に清潔な状態を保ちましょう。通常2〜3週間で白い根が出始め、根が5センチ程度に成長したら、そのまま水耕栽培として育てることができます。
水挿しが腐ってしまう場合は、水温が高すぎることが原因の場合が多いため、25℃前後の涼しい場所で管理してください。また、葉が水に触れないよう注意し、必要に応じて上部の葉も半分にカットして蒸散を抑えましょう。フィロデンドロンの水挿しは他の観葉植物と比較して成功率が高いため、複数本同時に挑戦することをおすすめします。
Q、ハイドロカルチャーでフィロデンドロンを育てる場合の注意点は?
A:ハイドロカルチャーでフィロデンドロンを育てる場合は、通気性と水位管理がより重要になります。ハイドロボールやゼオライトなどの培地を使用することで、根の周りに適度な空間ができ、酸素供給が改善されます。特にバーキンやフロリダなどの根が発達する品種では、この通気性が健康的な成長の鍵となります。
水位は培地の3分の1程度に保ち、完全に乾燥させないよう注意してください。ハイドロカルチャー用の水位計を使用すると管理が容易になります。また、培地自体も半年から1年に1度は洗浄し、汚れや塩類の蓄積を防ぎましょう。
5、水耕栽培でおすすめのフィロデンドロンの品種
フィロデンドロン レモンライム
フィロデンドロンレモンライムは、鮮やかなライムグリーンから黄金色の葉が美しい人気品種です。新葉は明るい黄色で、成熟するにつれて緑色に変化する色の変化が楽しめます。ハート型の葉は光沢があり、室内を明るく彩るインテリアプラントとして高い装飾効果を持っています。
水耕栽培においてレモンライムは成長が早く、つる性の特性を活かして支柱に巻きつけて育てることも可能です。比較的丈夫で初心者にも育てやすい品種です。育て方のポイントは、明るい間接光での管理と適切な湿度の維持です。葉の美しい色を保つためには、レースカーテン越しの明るい窓辺で管理し、定期的な葉水により湿度を保つことが重要です。水温は20〜25℃を維持し、冬場は15℃以下にならないよう注意が必要です。
フィロデンドロン バーキン
フィロデンドロンバーキンは、深い緑色の葉に白い斑が美しく入る非常に人気の高い品種です。その独特な白斑パターンは個体差があり、クリーム色からほぼ白色まで様々な表現を見せてくれます。コンパクトな成長習性で、室内での栽培に適しており、インテリア性の高さから多くの園芸愛好家に愛されています。
また、バーキンは比較的ゆっくりとした成長をするため、水耕栽培での長期管理にも適しています。育て方のポイントは、十分だが強すぎない光の管理です。光量が不足すると美しい白斑が消失し、全体が緑色になってしまう可能性があります。一方で直射日光は葉焼けの原因となるため、レースカーテン越しの明るい環境で管理してください。水替えは2週間に1度程度行い、常に新鮮な水を保つことで、バーキン特有の美しさを維持できます。
フィロデンドロン インペリアルグリーン
フィロデンドロンインペリアルグリーンは、大きく光沢のある深い緑色の葉が特徴的な品種です。葉は厚みがあり革質で、成熟した株では1枚の葉が30cm以上にもなることがあります。新芽は美しい赤銅色で、成長過程での色の変化も楽しめる魅力的な品種です。コンパクトな樹形で室内栽培に適しており、存在感のあるインテリアプラントとして人気があります。
インペリアルグリーンの水耕栽培では、大きな葉による蒸散量も多いため、適切な水位管理と定期的な水の補給が必要です。育て方のコツは、安定した環境の提供と適切な支持です。大きな葉を持つため、風通しが良すぎる場所では葉が傷みやすくなります。
6、まとめ
フィロデンドロンの水耕栽培は、初心者でも始めやすく長期間楽しめる栽培方法です。土を使わないため清潔で、根の状態が観察しやすいのが大きな魅力です。
水耕栽培成功のポイント
- 容器選び:透明なガラスやプラスチック製で根の状態を確認できるものを使用
- 水の管理:必ず水道水を使用し、週1回の補充と2-3週間に1度の完全交換を実施
- 置き場所:レースカーテン越しの明るい間接光で、20-28℃を維持
- 水位調整:夏は3-4cm、冬は1-2cmの水位で根の一部を空気に露出させる
おすすめ品種と特徴
- バーキン:白い斑入りが美しく、インテリア性抜群
- レモンライム:鮮やかな黄緑色で成長が早く初心者向け
- インペリアルグリーン:大型で存在感があり、深緑の光沢が魅力
トラブル対処法
葉の黄変は自然な老化か水質悪化が原因。株の元気がない場合は温度・光量・根腐れをチェック。剪定は節の上でカットし、水挿しで簡単に増やせます。適切な管理で美しいフィロデンドロンを水耕栽培で楽しみましょう。
【この記事を執筆した人】WOOTANG代表/植物アーティスト。植物をもっと身近に気軽に育てて欲しいという想いから2020年に水だけ育てる観葉植物ブランド「 WOOTANG(ウータン)」を立ち上げる。その他「植物×アート」制作を行い、インテリア、空間デザイン、メディアなどを通して提案している。<プロフィールページを見る>