
マドカズラの水耕栽培|育て方からトラブル対処まで初心者向けに解説
【執筆者】中島大輔(WOOTANG代表)【最終更新日】2025年9月5日
1、マドカズラの特徴
水耕栽培への適応性
マドカズラ(Monstera adansonii)は水耕栽培に非常に適した植物として知られています。根が水環境に適応しやすく、水挿しでの発根も比較的容易に行えることから、初心者にもおすすめです。マドカズラ特有の穴の開いた葉(切れ込み)は水耕栽培でも美しく展開し、室内のインテリアグリーンとしても高い装飾効果を発揮します。
②生育環境
マドカズラは中南米の熱帯雨林原産で、高温多湿と明るい間接光を好む環境を必要とします。生育適温は20〜28℃で、15℃を下回ると成長が停滞し、10℃以下では枯死の危険性があります。原産地では森林の木に着生して生育しているため、直射日光は苦手で、強すぎる光は葉焼けの原因となります。
耐寒性は弱く、日本では基本的に室内での栽培が適しています。一方で耐暑性は比較的強く、適切な湿度が保たれていれば35℃程度までの高温にも耐えることができます。マドカズラはつる性植物で、垂れ下がる性質を活かしてハンギングバスケットでの栽培も人気があります。空気中の湿度を好むため、乾燥する環境では葉先が枯れやすくなる特徴があります。
花言葉と風水
マドカズラの花言葉は「深い関係」「献身」「嬉しい便り」です。その特徴的な穴の開いた葉から「結びつき」や「つながり」を象徴する植物として親しまれています。つる性で垂れ下がる美しい姿は、しなやかさと成長力を表現しています。
風水の観点では、マドカズラは「コミュニケーション運」の向上効果があるとされています。リビングや玄関に置くことで、家族の絆を深め、来客との良好な関係を築く効果が期待できます。また、穴の開いた葉は「新しい出会い」や「チャンス」を呼び込む作用があるとされ、「仕事運」の向上にも効果的です。垂れ下がる性質から「邪気を払い流す」効果もあるとされており、ストレスの軽減や心の浄化にも役立つといわれています。
2、マドカズラの水耕栽培の始め方
マドカズラの水耕栽培を始める際は、まず水に適応した株を用意することが大切です。水だけで育てる観葉植物ブランド「WOOTANG(ウータン)」では、水耕栽培用のマドカズラをオンライン販売しているので、購入後すぐに栽培を開始できます。
①植物を器にセットする
水耕栽培に使用する容器は、ガラスやプラスチック製の透明なものがおすすめです。透明な容器なら根の状態や水位が一目で確認でき、管理が容易になります。また、容器はマドカズラの茎がぐらつかないよう、しっかりと固定できることが重要です。マドカズラはつる性で垂れ下がる性質があるため、ハンギングしたり、高さのある場所に設置する際は、安定性を確保することが大切です。
WOOTANGの水耕栽培専用の容器なら、器(ガラス製)とふた(木製)がセットになっているので、マドカズラを簡単に固定することができます。
②水を入れる
容器に水を入れる際は、必ず水道水を使用してください。浄水器を通した水や蒸留水は塩素が除去されているため、雑菌が繁殖しやすくなる危険があります。水道水に含まれる微量の塩素は、水の腐敗を防ぐ自然の防腐剤として機能するため、水耕栽培には最適です。
水を入れる前に、容器が清潔であることを確認し、汚れや油分が付着していないかチェックすることも重要です。マドカズラは水温の急激な変化に敏感なため、季節の変わり目や冬場は特に注意が必要です。
③理想的な水の量
マドカズラは比較的水をよく吸収する植物なので、特に夏場は水切れに注意が必要です。そのため高温期は根から幹の一部が水に浸かる程度(水の高さ3〜4cm程度)まで水位を上げても問題ありません。冬などの低温期は、水を吸収しなくなるので少なめ(1〜2cm程度)で問題ありません。植物の成長に応じて根の長さも変化するため、定期的に水位を調整し、常に適切なバランスを保つことが成功の鍵となります。
マドカズラは着生植物由来のため、気根(幹から出てくる太い根)がたくさん生えてきます。マドカズラの水耕栽培では、この気根は全部水に浸けずに、空気中に出しておいた方が元気に育ちます。
3、日々のケアと管理方法
水耕栽培でマドカズラを健康に育てるためには、土栽培とは異なる管理ポイントを理解することが重要です。特にマドカズラは明るい環境と高い湿度を好む性質があるため、光の管理と水質の維持、湿度管理が成功の鍵となります。
置き場所
マドカズラは明るい間接光を好む植物で、レースカーテン越しの窓辺や窓から少し離れた明るい室内が最適な置き場所となります。直射日光は葉焼けの原因となるため避ける必要がありますが、あまりに暗い場所では茎がひょろひょろと徒長したり葉の色が薄くなったりする可能性があります。マドカズラ特有の穴の開いた美しい葉を維持するためには、十分な明るさが必要です。
冬場の管理には特別な注意が必要です。窓際は夜間に急激に温度が下がるため、夕方以降は部屋の中央に移動させることをおすすめします。エアコンやヒーターの風が直接当たる場所も乾燥と温度変化の原因となるため避けてください。
マドカズラは垂れ下がる性質を活かして、高い位置に設置することも可能です。ただし、つるが伸びすぎる場合は定期的な剪定が必要になります。また、ハンギングタイプで育てる場合は、水の交換や管理がしやすい高さに調整することが重要です。
【参考記事】豊かなくらしに寄与する光/光と植物-植物工場(文部科学省)
水の交換頻度と水質管理のコツ
基本的に週1回は減った分の水を補充し、水位を一定に保つことが重要です。また、2〜3週間に1度は容器内の水を完全に交換し、新鮮な水と入れ替えます。この際、容器の内側にぬめりや藻が発生している場合は、スポンジなどで丁寧に洗浄し、清潔な状態を保ちましょう。
水替えの際には根を優しく水で洗い流すことで、根に付着した老廃物を除去できます。特にマドカズラは他の観葉植物と比較して根からの分泌物が多い傾向があるため、定期的な根の洗浄は健康維持に効果的です。夏場は水温が上昇すると水中の溶存酸素量が減少し、根が酸素不足になりやすくなるため、こまめな水交換がより重要になります。
マドカズラの水耕栽培では、水質の変化に対する反応が早いため、異変を見つけやすいという利点があります。水が濁ったり異臭がする場合は、すぐに新鮮な水に交換し、根の状態を確認してください。また、葉の色つやや新芽の出方も水質の良し悪しを判断する指標となります。マドカズラ特有の穴の開いた新葉が正常に展開するかどうかも、健康状態のバロメーターとなります。
適切な肥料の選び方と与え方
水耕栽培でマドカズラを現状のサイズで維持する場合、基本的に肥料は必要ありません。しかし、より大きく成長させたい場合や茎を太くしたい場合、葉の色つやを良くしたい場合は、適切な施肥が効果的です。水耕栽培では液体肥料を使用し、春から秋の生育期に月1回程度の頻度で与えます。
肥料を与える際の重要なポイントは、水に直接肥料を入れないことです。肥料は根を傷め、根腐れの原因となります。水耕栽培でおすすめの方法は、液体肥料を葉面散布することです。霧吹きに薄めた液体肥料を入れて葉の表裏にまんべんなく散布すれば、葉から直接栄養を吸収でき、根への負担を最小限に抑えられます。
水耕栽培に適した肥料としては、ハイポネックス原液やハイポニカ液体肥料などがあり、これらは水耕栽培専用に配合されているため安心して使用できます。マドカズラの健康な成長を促すためには、チッソ分がやや多めの肥料を選ぶと効果的です。適切な施肥により、マドカズラ特有の美しい切れ込み葉を長期間維持できます。
【参考】ハイポネックス原液のご紹介(株式会社ハイポネックスジャパン)
季節ごとの管理ポイント
春(3月から5月)は新芽が動き始める重要な時期です。明るい日陰で管理し、月1回程度の施肥を開始します。葉水を1日1〜2回与えて湿度を保ち、新芽の成長を促進させましょう。この時期はマドカズラの株分けにも適しており、剪定で適切な箇所を切って水挿しでの増やし方も成功しやすい季節です。春は新しい品種への挑戦にも最適で、マドカズラの繊細な品種も比較的育てやすくなります。
夏(6月から9月)は生育が最も活発な時期ですが、高温による水質悪化に注意が必要です。水温が30℃を超えないよう、直射日光を避けて風通しの良い場所で管理します。水の交換頻度を増やし、1〜2週間に1度は完全に交換しましょう。冷房による乾燥対策として、葉水の回数を増やすことも大切です。マドカズラは暑さに強い植物ですが、水耕栽培では水温管理がより重要になります。この時期は特につるが伸びすぎることがあるため、適度な剪定で形を整えることも大切です。
秋(10月から11月)は成長が緩やかになる時期です。肥料の頻度を徐々に減らし、10月以降は施肥を控えめにします。気温の低下に合わせて室内の暖かい場所に移動させ、急激な温度変化を避けるよう配慮します。マドカズラのような垂れ下がる植物では、この時期に形を整える剪定を行うのも良いでしょう。
冬(12月から2月)は休眠期に入るため、15℃以上の場所で管理することが最重要です。肥料の葉面散布は完全に止めます。ただし、暖房による乾燥には特に注意が必要で、マドカズラは湿度を好むため、葉水は継続して与えます。マドカズラは多くの熱帯植物の中でも特に寒さに弱いため、この時期の管理が翌年の生育を左右します。
4、よくある質問と対処法(Q&A)
Q:マドカズラの葉が黄色くなってきました。何が原因でしょうか?
A:葉が黄色くなる原因はいくつか考えられます。まず、一番下の古い葉が1〜2枚黄色くなる場合は、新陳代謝による自然な老化現象なので心配ありません。植物は古い葉に老廃物を溜めて落とし、新しい葉の成長にエネルギーを集中させる性質があります。この場合は黄色くなった葉を根元からハサミで切り取ってください。
一方、複数の葉が同時に黄色くなったり、新しい葉まで変色する場合は、水質の悪化や根腐れの可能性があります。特にマドカズラは水の汚れに敏感な傾向があるため、水が濁っていないか、異臭がしないか確認し、すぐに新鮮な水と交換しましょう。また、根が茶色く変色していたり、ぬめりがある場合は、傷んだ部分を清潔なハサミで切り除き、容器を洗浄してから新しい水で管理を再開してください。
Q:マドカズラがぐったりして元気がありません。原因と対処法を教えてください。
A:マドカズラがぐったりする原因として最も多いのは、温度不足と光量不足です。マドカズラは熱帯植物のため15℃以下の環境では活力が低下し、ぐったりとした状態になります。まず置き場所の温度を確認し、20℃以上の暖かい場所に移動させてください。
次に光量を確認しましょう。マドカズラは明るい環境を好むため、暗すぎる場所では株が弱り、茎がひょろひょろと細くなってしまいます。特に穴の開いた葉の美しさを保つためには十分な光量が必要で、光量不足では新葉の切れ込みが少なくなることがあります。レースカーテン越しの明るい窓辺に移動させ、1日数時間は十分な明るさを確保してください。
また、根腐れの可能性も考えられます。特に高温期は水温が上昇すると根腐れの可能性が高まります。根を確認して、柔らかくなっていたり、異臭がする場合は、傷んだ根を切り除き、新鮮な水で管理を再開してください。水位も重要で、根の一部が必ず空気に触れている状態を保ちましょう。
Q:マドカズラがひょろひょろと伸びすぎてしまいました。どうすれば良いですか?
A:マドカズラがひょろひょろと伸びすぎる原因は主に光量不足です。光量が不足すると茎が細く間延びし、葉も小さくなってしまいます。まずはより明るい場所に移動させ、十分な光を確保してください。レースカーテン越しの窓辺や明るい室内灯の下で管理すると改善されます。
伸びすぎた部分は思い切って剪定することをおすすめします。マドカズラは剪定に強い植物で、適切な位置でカットすることで新しい芽が出やすくなります。剪定は節(葉の付け根)の上約1cm程度の位置で行い、切り取った部分は水挿しで新しい株として育てることも可能です。剪定により、よりコンパクトで美しい株に仕立て直すことができます。
Q:マドカズラの水挿しでの増やし方を教えてください。
A:マドカズラの水挿しは比較的成功しやすく、4月から6月頃が最適な時期です。健康な茎を10〜15cm程度にカットし、下部の葉を取り除きます。切り口は斜めにカットして水を吸い上げやすくし、発根促進剤を使用するとより確実です。
透明な容器に水道水を入れ、切り口が2〜3cm水に浸かるようにセットします。2〜3日に1回水を交換し、常に清潔な状態を保ちましょう。通常2〜3週間で白い根が出始め、根が5cm程度に成長したら、そのまま水耕栽培として育てることができます。
水挿しが腐ってしまう場合は、水温が高すぎることが原因の場合が多いため、25℃前後の涼しい場所で管理してください。また、葉が水に触れないよう注意し、必要に応じて上部の葉も半分にカットして蒸散を抑えましょう。マドカズラの水挿しは他の観葉植物と比較して成功率が高いため、複数本同時に挑戦することをおすすめします。
モンステラを水挿しで増やす方法|初心者でも失敗しない挿し木の水耕栽培ガイド
Q:ハイドロカルチャーでマドカズラを育てる場合の注意点は?
A:ハイドロカルチャーでマドカズラを育てる場合は、通気性と水位管理がより重要になります。ハイドロボールやゼオライトなどの培地を使用することで、根の周りに適度な空間ができ、酸素供給が改善されます。特にマドカズラは根が発達する植物なので、この通気性が健康的な成長の鍵となります。
水位は培地の3分の1程度に保ち、完全に乾燥させないよう注意してください。ハイドロカルチャー用の水位計を使用すると管理が容易になります。また、培地自体も半年から1年に1度は洗浄し、汚れや塩類の蓄積を防ぎましょう。マドカズラの垂れ下がる美しい姿を活かすためには、ハンギングタイプの容器を使用することで、より自然な姿を楽しむことができます。
Q:マドカズラを水耕栽培から土栽培に移すことはできますか?
A:マドカズラを水耕栽培から土栽培に移すことは可能ですが、慎重な移行が必要です。水耕栽培で育った根は土の環境に適応するまでに時間がかかるため、急激な環境変化はストレスとなります。移行する際は、まず小さな鉢に水はけの良い土を用意し、根を傷つけないよう丁寧に植え付けます。
移植後の1〜2週間は明るい日陰で管理し、土が乾燥しないよう注意深く水やりを行います。この期間は根が土環境に適応する大切な時期なので、肥料は与えず、ストレスを最小限に抑えることが重要です。新しい葉が出始めたら、徐々に明るい場所に移動させ、通常の土栽培の管理に移行できます。ただし、水耕栽培の清潔で管理しやすい環境に慣れている場合は、そのまま水耕栽培を続ける方が安全で確実です。
Q:マドカズラの育て方で最も難しいポイントは何ですか?
A:マドカズラの育て方で最も難しいポイントは、適切な光量と湿度のバランスを保つことです。光量が不足すると茎がひょろひょろと伸びすぎてしまい、一方で直射日光は葉焼けの原因となります。また、マドカズラは高い湿度を好むため、特に冬場の暖房による乾燥や夏場のエアコンによる乾燥には注意が必要です。
水耕栽培では土栽培と比較して根の状態が観察しやすいものの、水質管理と温度管理がより重要になります。特に気温の変化に敏感で、15℃以下では急激に弱ってしまうため、季節の変わり目の温度管理が成功の鍵となります。しかし、これらのポイントを理解して適切に管理すれば、マドカズラは非常に丈夫で長期間楽しめる植物です。むしろ水耕栽培は土栽培よりも清潔で、根の状態が確認しやすいため、初心者にとってはより管理しやすい方法といえるでしょう。
【この記事を執筆した人】WOOTANG代表/植物アーティスト。植物をもっと身近に気軽に育てて欲しいという想いから2020年に水だけ育てる観葉植物ブランド「 WOOTANG(ウータン)」を立ち上げる。その他「植物×アート」制作を行い、インテリア、空間デザイン、メディアなどを通して提案している。<プロフィールページを見る>
水だけで育てる観葉植物ブランド WOOTANG(ウータン)
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